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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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東日本再生ヴィジョン展の経緯と発展

現在、東日本大震災により甚大な被害を受けた地方自治体の復興に向けた取組み等について広く情報発信を行う目的で実施されている「東日本再生ヴィジョン展」がパリ市庁舎での開催をきっかけとして、様々な国・地域で開催されています。今回は地域間の連帯を生み、発展していく当事業における一連の動きについて紹介いたします。

○経緯
まず、東日本再生ヴィジョン展は、パリからスタートいたしました。これは、東日本大震災から1年後の2012年3月に、パリノートルダム寺院での追悼ミサ、トロカデロ広場での追悼集会の企画・運営に携わった方々に対して、追悼集会後にパリ市より市庁舎内展示室の提供とイベント開催について要請が出され、実施の運びとなったものです。パリ市在住の個人有志が実行委員会を組織し、クレアパリを含めた在仏日本関係機関等と協力をしながら、イベントを作っていきました。

○パリ市庁舎・東日本再生ヴィジョン展
実行委員会の方々の被災地への想いと多大なご尽力によって、「パリ市庁舎・東日本再生ヴィジョン展」が2012年6月 21 日(木)から約半月にわたり開催されました。今回、いくつかのイベントについて紹介したいと思います。まず、被災各県(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県)の写真及びパネル展示が実施されました。これは、被災6県の協力を得て、復興に向けた取組に関するパネル展示(仏語)と、復興状況の撮影写真(被災直後と被災1年後の比較写真など)展示を行ったものです。
また、同イベントのプログラムとして、福島県による復興計画と具体的取組状況等に関するプレゼンテーションも行われました。具体的には、震災時の様子や被害状況について写真やグラフを用いて説明するとともに、福島県の復興ヴィジョン及び復興計画について、通訳を交えながら、来場者に対して説明頂きました。プレゼンテーションの最後には、2012 年 3 月 11 日に発表された「ふくしま宣言」にも触れ、震災後の福島県の取組みについて力強く訴えて頂きました。来場者からは放射能汚染による子供たちへの影響や復興に関する財源など、細かな部分にまで質問が相次ぎ、普段の断片的なニュースではわからない点に耳を傾けている様子でした。また、「日本国全体の財源によって復興されるため、日本国全体に貢献できる復興を目指さなくてはならない。」という福島県の説明には強く心を打たれました。
そして、三陸鉄道の漫画「さんてつ」の展示も印象的でした。岩手県の三陸海岸を縦貫する路線を有する第三セクターの鉄道会社が津波で大きく被災したにも関わらず、会社が一丸となり一部区間は6日後に運転を再開しました。漫画「さんてつ」の発刊もあり、現在、被災地復興のシンボルとして全国から注目されています。今回、漫画の作者、出版社の協力を得て、原画と併せて復興状況に関する展示が行われました。さらに、ヴァイオリンプロジェクト「千の音でつなぐ絆」として、岩手県陸前高田市の津波被害による瓦礫の中から、ヴァイオリンドクター中澤宗幸氏が地元の製材業者と協力して木材を探し出し、津波に耐えて唯一生き残った松の生命力への想いを込めてヴァイオリンを作り上げました。会期中において、そのヴァイオリンの展示とともに、世界的に有名なパリ在住のイスラエル人奏者ギトリス(Ivry GITLIS)氏による演奏会が行われました。ギトリス氏は、震災1年後の3月11日、陸前高田市の追悼式の会場で演奏をした経緯があります。
他にも充実したプログラムで構成され、大変反響のあるイベントとなりました。そして、この展示会がきっかけとなり、パリのドラノエ市長が福島県の佐藤知事を招へいし、両者の会談が実現いたしました。会談では、医療・再生可能エネルギー・都市計画分野での技術協力に言及されるなど、とても実りの多いものになりました。

○ブリュッセル、リヨンへの展開
パリでのイベントを契機として、2012年11月27日から10日間に渡り、ブリュッセルEU本部にて写真展が開催されました。この写真展は、東日本大震災の直後に募金活動を行い、被災地に寄付を行ったEUの職員らで作る組織が、震災復興を支援するヨーロッパの人々の連帯を示し、これからも被災地の復興への取り組みを支援しようと企画したものです。そして、パリのイベントで使用された写真パネル等が活用されました。
写真展では、非営利団体「国境なき子どもたち」が撮影した被災地の子供たちの写真や、パリのイベントでも展示されたフォトジャーナリストの小原一真さんが撮影した、東京電力福島第一原子力発電所でがれきの除去などに当たっている作業員の写真など、およそ100点が展示されました。
次に、2013年3月12日から22日まで、在リヨン日本国出張駐在官事務所、リヨン市及びリヨン・ローヌアルプ日本人会との共催で、「リヨン東日本再生ヴィジョン展」がリヨン市庁舎とリヨン3区役所等で開催されました。ちょうど東日本大震災から2年目に当たる日から開催されたこの展示会では、震災直後から多大な支援をいただいたリヨン市と周辺の自治体及びその市民に感謝の意を示しつつ、被災地の復興状況を統計データや写真を使ってパネル展示、日仏交流に焦点を当てた展示に加えて、大学機関等の有識者による震災に関する講演会、子供向けの日本文化アトリエなどが開催されました。また、福島県の民芸品の「起き上がりこぼし」に、日仏の著名人が絵付けをして被災地に寄贈するという「起き上がりこぼしプロジェクト」も実施されています。
これらの催しを通じて、リヨン市民の方々に対し、震災後の日本の状況を幅広く、正確に伝えるとともに、メディア等を通して被災地の皆様へ励ましの気持ちを伝えることができました。また、2012年にパリ市庁舎及びブリュッセルのEU本部において使用された展示物が活用され、一連のイベントが効果的に連動していることが分かります。

○日本スペイン交流400周年事業の企画展示へ
そして、ヴィジョン展の波は、スペインのマドリードにも渡りました。ちょうど、日本とスペインは、2013年から2014年にかけて、同年が慶長遣欧使節団派遣400周年に当たることから、スペインにおいて「日本スペイン交流400周年事業」が開催され、その周年事業の一環としてパリ、ブリュッセル、リヨンの流れを汲んだ「元気な日本展」が開催される運びとなりました。この展示は、元気な日本展実行委員会(日西観光協会)が主催となり、2013年6月12日より開催されています。今回の企画も、東日本大震災に際し、人々がいかに困難と闘い乗り越えようとしたか、今また「元気な日本」がどのように復活しようとしているかについて紹介するという趣旨で実施されています。また、大震災以来、様々な支援をしていただいたスペインの皆様に感謝を示し、交流400周年の機会に更なる信頼・友好関係を築くことも目的としています。
今回、東日本大震災からの復興状況として、被災各県の自治体から提供いただいた被災直後と被災2年後の比較写真などの写真は、大きな日本地図に設置されたモニターにスライドショーの形で映し出され、来場者の関心を大いに引いていました。
また、小原氏の写真展、三陸鉄道や宮沢賢治の展示など、パリなどで実施された企画も催されました。そして、池坊門下の方々による生け花展、小峠丹山氏による京焼展、竹中幸生氏の墨絵展など、いわゆる「ホンモノ」の日本文化を伝える展示も大きな存在感を放っていました。これらの展示は、マドリードで実施された後、バリャドリッド、マラガ、バルセロナ、サンティアゴ・デ・コンポステ-ラ、サラゴサ等で実施をされる予定です。
マドリードの展示においては、パリ、ブリュッセル、リヨンの関係者が一堂に会し、「元気な日本展」にエールを送るとともに、自らの展示の経験や思い出話に花を咲かせていまいた。

○連帯、そして交流へ
今回、一連のイベントを通して、被災地に対する各国・各地域からの連帯の精神と、在外居住の日本人の熱意及びバイタリティーを実感することができました。これらの方々は、強力な日本のサポーターであり、今後もつながりを大切にしていかなければならないと痛感いたしました。また、パリ市と福島県のように、支援から都市交流へのつながりそうな、新たな息吹も感じることができたのも大変うれしいことでした。
最後に、ご協力いただいた被災各県の皆様にはこの場を借りて深く感謝申し上げ、本稿のまとめとしたいと思います。本当にありがとうございました。

パリ事務所 所長補佐 原田知也(群馬県富岡市派遣)