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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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日本で広がるフランス発の音楽祭

ラ・フォル・ジュルネ(La Folle Journée)は、フランス北西部のナント市で、1995年に創設されたクラシック音楽祭で、毎年、1月下旬から2月上旬には、ナント市の住民のみならず、フランス各地からも人が訪れています。
また、ナント市は、2009年から新潟市と姉妹都市を結んでおりますが、両市の市民間の交流の歴史は1992年までさかのぼり、日仏交流イベントを年間複数開催するなど、大変活発な交流を続けています。

パリ事務所では、ナント市と新潟市のような活発な姉妹都市交流について、ナント市の日仏交流団体「アトランティック・ジャポン」からオリヴィエ・ドルーアン(Olivier Drouin)氏から話を伺っています(その様子はCLAIRメールマガジン vol.30(2012年7月11日)に掲載しています。)。今回は、ナント市とラ・フォル・ジュルネに焦点を当てたいと思います。

■ナント市について
ナントは、16世紀にフランスに併合されるまでは、ブルターニュ公国の中心地であり、華麗な宮廷文化が花開いた場所です。また、ユグノー戦争を終結させるため1598年に発せられた「ナントの勅令」でも知られています。16~18世紀にかけてフランス最大の港であったナントは、1970年代以降、工場や港の移転で活力を失ったものの、1990年代以降は、ジャン・マルク・エロー元市長(現在、オランド政権の下で首相を務めています。なお、現在市長を務めているのはパトリック・ランベール(社会党)氏。)の強力なリーダーシップの下で、「文化」を一つの柱とした都市再生のためのプロジェクトを次々と実施し、現在、ナントは「文化都市」として欧州の中でも注目を浴びています。

■文化政策の予算に占める割合は12.7%
ナント市がどれだけ文化政策に力を入れているかを示すものとして、2012年の同市予算に占める文化政策に関する予算の割合が12.7%という数値があります。2012年同市予算が全体で4億8,220 万ユーロとなっているため、単純に計算すると約6,000万ユーロを文化政策に関する予算として使っていることになります。
また、ナント市文化局の人数は市の職員の約10%にものぼっていますが、同市の文化政策には職員だけでなく、多くの市民、団体を巻き込んでおり、それが「文化都市」としての現在の成功につながっていると考えられます。

■ラ・フォル・ジュルネについて
ラ・フォル・ジュルネ(「熱狂の日」という意味)は、フランスのナント発祥で、フランス最大級のクラシック音楽の祭典です。ナントでは国際ピアノフェスティバルなどが開催されていましたが、これを運営していたCREA(アソシアシオン法にもとづいて設立された協会)が、ルネ・マルタン氏の発案により、ナント市からの助成を受けて1995年から音楽祭を創設しました(創設者であるルネ・マルタン氏が芸術監督を務めています)。地域密着型の音楽祭というコンセプトを打ち出し、1月下旬から2月上旬頃にかけて、ナントの国際会議場(シテ・デ・コングレ)等の複数の会場で、コンサートを数多く、一斉に開催しています。また、ファンを獲得するための工夫も明確で、①低料金にすること、そのために②一回の演奏時間を短くすること、③複数の演奏会を同時に行うことで選択肢を広げることなどが挙げられます。

■日本でのラ・フォル・ジュルネの広がり
今回、ラ・フォル・ジュルネの開催にあわせて現地ナントの視察に訪れたびわ湖ホールのご担当の方から話を伺うと、従来からびわ湖ホールで行っているオペラ等の公演では、東京や京阪神からの来場者が比較的多いのに対して、ラ・フォル・ジュルネでは、地元の家族連れ等が気軽にいらっしゃってクラシック音楽に親しまれているとのことです。また、ラ・フォル・ジュルネを通じて地域の活性化に一層寄与できるよう、地元の自治体などの更なる参画を求めているとのことです。
ラ・フォル・ジュルネはナントを発祥として世界各地に広がっています。海外では、ポルトガル・リスボン、スペイン・ビルバオ、ブラジル・リオデジャネイロ、ポーランド・ワルシャワなどでこれまで開催されてきました。そして、日本でも、東京(主催:東京国際フォーラム)、金沢(主催:ラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭実行委員会)、新潟(主催:ラ・フォル・ジュルネ新潟「熱狂の日」音楽祭実行委員会)、大津(主催:びわ湖ホール)、鳥栖(主催:ラ・フォル・ジュルネ鳥栖「熱狂の日」音楽祭実行委員会)と、各地で開催されています。
今後、日本でも益々、フランス発の音楽祭が盛り上がることを願っています。

(パリ事務所所長補佐 西村高則)

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