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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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仮装して、走って、味わって。楽しいマラソン、メドックマラソン

2012年9月8日から11日にかけて山梨県と合同でメドックマラソン(Marathon du Médoc)の視察及び実行委員会へのヒアリングを行いましたので、報告いたします。

○メドックマラソン当日の様子
メドックマラソンとは、仮装をしながら、ワインのシャトー巡るという、とてもユニークなフルマラソンです。今年で28回目の開催を迎えた同マラソンは、メドックマラソン実行委員会(l'Association pour le Marathon des Châteaux du Médoc)主催でポーイヤック市にて開催され、世界40ヵ国から約8,500人の参加がありました。この8,500人という参加人数も、参加者がこのイベントを充分に楽しめるようにとの配慮から適正規模を保つために制限されたもので、このマラソンの人気の高さが伺えます。日本からは約450人が参加し、これは、フランス、イギリスに次ぐ3番目の多さでした。このように日本での人気の高さは好意的にうけとめられており、当日の司会者からも「私たちの友人、日本人のみんなです!」とアナウンスされるなど、このマラソンにおける日本の存在感を確かめることができました。今年の仮装テーマは、「歴史」ということで、各々創意工夫を凝らしたものから、極めてシンプルなものまで多種多様な衣装で参加していました。タイトルにもあるように、「楽しむ」ことを主眼においたイベントであるため、競争というより各参加者がいかに自分のペースで楽しめるかということが重視されています。そのため、このマラソンには賞金がなく、数名の入賞者以外は、参加者に同じ景品が渡されます。そして、数名の入賞者には、自分と同じ重さのワインが贈呈されるというユニークさにも、このマラソンの特徴が表れています。このマラソンは地元のワインをPRする格好の機会となっており、参加者以外も気軽に地元の美味しいワインを楽しめるようになっていました。
そして、一番印象的であったのは、ボランティアの多さと彼らの感じのよさでした。彼らと話すと、非常にいきいきとしており、大変やりがいを感じている様子でした。そして、言葉の1つ1つから、もてなしの精神を感じることができました。後日、実行委員会にインタビューをした際には、ボランティアスタッフがやりがいを持ってイベントに参加できる秘訣を聞くことができました。特に、ボランティアスタッフが訪問者との交流を楽しんでいることが、このイベントに特別な暖かさを加えている要因だと感じ取ることができました。


◯散歩(La balade en Médoc)当日の様子
マラソンの翌日に実施されたメドック散歩というエクスカーションに参加しました。このイベントは、ワインを味わい、ぶどう畑の景観を楽しみながらシャトー間をねり歩くイベントで、2,000人以上が参加をしました。このイベントは、毎年実施地域が変わり、今回は、マコーというコミューンにて行われました。マラソン参加者以外も参加可能で、参加費は一人5ユーロでした。
すべてのコースを周り、大体3時間程かかりました。コース上では、ワインが飲めるポイントが5箇所あり、3箇所はシャトー、2箇所はコース上にテントを張っての設営で、地元の人たちが手作りで行っている様子が伺えました。また、ポイント毎に音楽演奏があり、彼らもボランティアにて参加をしているとのことでした。このイベントも、無理をして新たなものをつくるのではなく、既存のものを最大限利用して、楽しんでもらうという姿勢が感じられました。

○実行委員会に伺った、メドックマラソンの極意
9月11日に、実行委員会副代表のマータンさんと事務局員デュヴォンセルさんから、メドックマラソンの詳細について話を伺うことができました。彼らによると、このマラソンは6名のニューヨークマラソン参加者の発案からはじまり、地元シャトーの理解と協力により実施の運びとなったとのことです。初回は1985年で、500人の参加者からはじまり1989年に2,000名の参加者となり、1990年以降、爆発的に参加者が増えたとのことです。その他、インタビューした内容を以下に記します。

□実行委員会の体制
・実行委員会の人数は約100名
・執行部が9名
・40のプロジェクトがあり、各プロジェクトにリーダーがいる。
・3,500人以上のボランティア
・友情と人、平等を尊重することが、実行委 員会のモットー
・ゴミ清掃は業者に委託し、ボランティアのメンバーには負担をかけないようにしている。
□予算関係
・マラソンの予算規模は年間100万ユーロ
・予算内訳については、参加費が60%、スポンサーからの資金提供が40%で構成
・スポンサーには企業の他、アキテーヌ州、ジロンド県、ポーイヤック等自治体を含む。
・大きなスポンサーに依存するよりも、小さなスポンサーを数多く確保した方がリスク分散となる。
・スポンサーは毎回リピーターになっている。
・マラソングッズの販売手数料も収入となる。
□危機管理体制
・暑い時期の開催のため、給水場は通常のマラソンコースの2倍設けている。
・メディカル面での体制もきちんと整備している。
□地元への配慮
・地域のPRにつながり、地元のコンセンサスにつながっている。
・地元への配慮として、ランナーが走ったらすぐに清掃し、道の閉鎖もすぐ解く。
□企業のマラソン参加
・企業やシャトーとしても参加できる(参加費は個人参加者よりも高い)。
・PRのために、俊足ランナーが自社広告の入ったユニフォームを着て参加するのもOK
・2012年のチャレンジ参加枠は完売(540枠程度)

◯視察を通しての感想
今回の視察を通じて、地域全体でイベントをつくっているという共通意識が、このイベントの原動力であると感じました。受入側で言うと、地元の子供を含む多くのボランティアが参加したり、地元スポーツチームの出展があったりと地域のコンセンサスが感じられました。一方、参加者側も全体的にマナーがよく、酩酊者やぶどう畑を荒らす者は見かけませんでした。また、参加者同士、地元住民との交流、触れ合いを感じることができました。そして、イベントの運営方法やボランティアのやりがい創出など、日本における取組みにおいても大変参考になる点が多いと思われます。
近年、日本の各自治体では、観光客へのおもてなしの機運を醸成し、地域のファンづくりのために様々な施策を打ち出しておりますが、このメドックマラソンには我々が目指すべき姿を見いだすことができると思います。
次回のマラソンでは、参加者の視点でこのイベントを追いかけてみようと思いますので、そのためにも今から体力作りに励んでいきたいと思います。ちなみに、次回の仮装テーマは「SF」に決定済とのことです。

パリ事務所では、地方自治体の国際的活動が多様化している状況に対応し、フランスでの行政視察や各種調査等の支援を行っております。フランスでの事業展開をお考えの際にはぜひお気軽に当事務所までご連絡ください。

(原田所長補佐 群馬県富岡市より派遣)

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