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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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公選職の兼職制限法案、国民議会で可決

フランス統治機構の特色の一つとされる、国会議員や地方議員の兼職。1985年以来徐々に制限がかけられてきたが、依然として大多数の国会議員が地方公選職を兼職している。その制限の強化はオランド大統領の選挙公約の一つでもあった。地方分権3法案には入っていないが、地方改革に関わる重要法案の一つと言わねばならない。
去る2013年7月9日、兼職制限法案が国民議会において可決(国民議会先議)、上院に回付された(上院審議は秋を予定)。その状況を報告する。

法案は、国会議員と欧州議会議員に関するものの2本に分かれている。

国会議員については、国民議会議員、上院議員とも、コミューンのメール(市町村長)・副メール、コミューン間広域行政組織・県・州の議会の議長・副議長、混合経済会社の理事長・副理事長、その他法定の全ての地方公共団体の議長・副議長を兼職することが禁止される。次の国民議会議員選挙が予定されている2017年から適用される。
賛成300票、反対228票。

欧州議会議員についても、地方公選職との兼職について同内容の制限が課せられる。こちらは次の欧州議会議員選挙が予定されている2019年から適用される。賛成305票、反対228票。

オランド大統領は2014年3月のコミューン統一選挙からの適用を公約していたが、与党内からも造反が予想されたことから時期については先延ばしにされた。

党派ごとの賛否の状況を見ると、まず与党の中では、
社会党は269人が賛成(7人欠席、4人反対、10人棄権)。ただ本音ベースでは一枚岩ではなく、社会党の支持率低下の中で公約維持のための苦渋の政治的決断だったと評されている。
エコロジストは元々積極派であり賛成。むしろ、2014年(3月にコミューン議会議員統一選挙、6月に欧州議会議員選挙、9月に上院議員選挙)、2015年(3月に州議会議員統一選挙と県議会議員統一選挙)から適用するよう主張し、修正案も提出したが否決された。なお同党は国会議員の連続3期を超える再選を禁止する法案も提出したがやはり否決されている。
他方、中道左派で与党の一角を占める左派急進党は反対。

野党を見ると、
保守のUMP、大多数のUDIは反対。
極左の左派戦線、極右の国民戦線はともに賛成。

秋から審議が始まる上院は「地方代表」的性格が強いことからより激しい反対が予想される。そのため上院で否決のうえ国民議会の第二読会以降に回されるとの観測が有力。
ただし、当該法案は憲法を補完する組織法と位置付けられているため、上下両院の協議が整わなかった場合の国民議会での「最終議決」には、総定員の過半数(289)の賛成が求められるが、今回の国民議会の賛成票の状況はこのラインもクリアし得る状況ではある。

(パリ事務所長 黒瀬敏文)