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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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第4回日欧地域連携グッドプラクティスウェビナー 神奈川県×オウル市(フィンランド)「『オウルヘルス』に向けたオウル・ヘルスケア・エコシステムと『未病』に向けた神奈川ヘルスケア・ニューフロンティアとのコンセプトに基づいた地域連携」開催!

2021年3月25日(木)に日欧地域連携グッドプラクティスウェビナーを開催しました。第4回目となる本ウェビナーでは、『「オウルヘルス」に向けたオウル・ヘルスケア・エコシステムと「未病」に向けた神奈川ヘルスケア・ニューフロンティアとのコンセプトに基づいた地域連携』をテーマとし、神奈川ヘルスケア・ニューフロンティア(神奈川県)と、オウル・ヘルスケア・エコシステム(フィンランド オウル市)との地域連携好事例を取り上げました。、登壇した神奈川県、オウル市、地元大学や企業からみた日欧連携の地域や中小企業への重要性や課題が具体的に紹介されまた本ウェビナーには、日欧双方から約30名が参加しました。

 当日の映像、資料はこちら。https://www.ejrc-helpdesk.eu/ja/best-practices5de790d2

次回は、5月に産業クラスター、欧州の地域、日本の都道府県・主要都市に向けた「日欧地域連携年次会議&マッチメイキングイベント」を開催する予定です。次回のイベントを含め、欧州との連携にご関心がありましたら、下記URLからご登録いただき、日欧地域連携プラットフォームにぜひご参加ください。

日欧地域連携ヘルプデスク事業HP:https://www.ejrc-helpdesk.eu/ja/register

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●第4回ウェビナー「『オウルヘルス』に向けたオウル・ヘルスケア・エコシステムと『未病』に向けた神奈川ヘルスケア・ニューフロンティアとのコンセプトに基づいた地域連携」概要

①開会挨拶

日欧産業協力センター専務理事・駐日欧州連合代表部 公使参事官 Philippe de Taxis du Poët 氏

②プレゼンテーション

(講演1)神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 国際戦略担当部長 大木 健一 氏(神奈川県)

(講演2)Business Oulu 国際事業日本担当 シニアアドバイザー 内田 貴子 氏(オウル市、フィンランド)

③パネルディスカッション

神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 国際戦略担当部長 大木 健一 氏

University of Oulu 教授Olli Silvén 氏

CWC-Nippon CEO Mika Kouhia 氏

Business Oulu 国際事業日本担当 シニアアドバイザー 内田 貴子 氏

(一財)自治体国際化協会パリ事務所長 羽白 淳

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① 開会

日欧産業協力センター専務理事・駐日欧州連合代表部 公使参事官 Philippe de Taxis du Poët 氏

・日欧のクラスター及び地域がエコシステムとして共に事業を行うことで、共に学び合い、今後の横展開を考えることができる。その支援のために日欧地域連携ヘルプデスク事業を立ち上げた。

・日欧の地域連携促進のため、CEEJAとクレアによる好事例紹介のウェビナーを実施している。

・日欧産業協力センターがこのような取組を行っている理由は、草の根レベル、地域レベルの協力が非常に重要だと考えているためである。

・研究所、大学、投資家、銀行、地域の政策決定者、中小企業、スタートアップ等の全てが提携することにより、素晴らしいエコシステムができる。

・神奈川県とオウル市は各々、模範的なエコシステムの連携となっており、中小企業がこうした地域のエコシステムに支えられ、エコシステムが情報提供等の支援を行うことで、中小企業における国際化の第一歩を支援している。

・日欧の経済連携協定締結が引き金となり、テクノロジー等の分野にて多くの日欧連携が開始されているが、この連携を草の根レベルでも活発にするため、日欧地域連携ヘルプデスクを通じて、時間、知識、人材の不足する中小企業へ支援を行いたい。

・ヘルスケアやバイオテクノロジーはコロナ禍において優先順位が高い事業領域である。

・現在のコロナ禍でデジタル化が進み加速し、ビジネスマッチメイキングにおいてもデジタル化が進んでいる。

・循環経済、リサイクル社会の構築が日欧で優先課題となっており、研究や規制における産業政策等で日欧共に同じ課題に対応すべく取り組んでいる。

・日欧連携は、双方にとり世界へのPRとなるだけでなく、日欧が協力し第三国へ支援を行うことができる重要なものである。今後、世界を舞台にした日欧連携の活動を支援したい。

 

②講演1「フィンランド・オウル市と神奈川県のライフサイエンス分野の連携について」

神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 国際戦略担当部長 大木 健一 氏(神奈川県)

・日本が迎えている超高齢化社会に、従前と同じ社会システムでは対応できない。神奈川県では、数年前からヘルスケア・ニューフロンティア政策を実施している。

・当政策は、最先端医療の追求と未病の改善という2つのアプローチにより新たな市場参入を創出しながら、健康長寿を目指している。

・未病の概念は、病気と健康の間で揺れている心身の状況であり、これを健康に傾けることが未病の改善という概念である。

・現在の心身の状況を数値で示す、未病指標を作成した。

・スマートフォンのアプリケーションを作製し、15項目を入れることにより、現在の未病指標による数値を示すことができる。今後、新たに未来予測の機能を追加していく。

・未病という旗印の基に、新たな産業を興すことを神奈川が提唱し、県内外における872社がメンバーとなっており、様々なプロジェクトが生まれている。

・最先端医療の振興では、神奈川県では再生細胞医療の産業化に力を入れている。

・再生医療産業法が改正されたことで病院の外で細胞の培養製品を作ることが可能となり、産業化の道筋が立った。

・神奈川県は、日本初の遺伝子治療の施設を殿町という地域に作り、ベンチャー育成をしながら、様々な企業がバリューチェーンを構築するネットワークやグローバルなネットワークを活用しながら、産業を興す取組を実施している。

・神奈川には再生医療における3つの拠点があり、これらを連携させながら、イノベーションを進めている。日本初の都市型サイエンスパークである神奈川サイエンスパーク、殿町にあるライフイノベーションセンター、オープンイノベーションの拠点となる湘南アイパークである。湘南アイパークには、およそ100機関のメンバーが入っており、製薬だけでなく、IT、医療機器等の様々な分野が新たなイノベーションを起こすべく、取り組んでいる。

・神奈川県はオウル市をはじめ、世界の地域及び機関と連携を結んでいる。神奈川県の中小企業が国際展開する際、神奈川県の持つネットワークを利用いただける仕組みを作っている。

・神奈川県とオウル市は2014年に協定を結び2019年に更新した。横浜国立大学とオウル大学で繋がりがあり、それをベースとして関係を構築した。

・2020年10月には、オウルのヘルスラボを紹介するウェビナーを開催し、11月には他の地域を含めたビジネス交流会でオウル市にも話をしていただいた。

・毎年、再生細胞医療のネットワークにてイベントを開催しているが、オウル市を始めとする様々な組織にも参加してもらっている。

・オウルと連携したのは、①オウル市は技術力が高く、日本が弱いデータ分野に非常に強い、②控えめな日本人と合う国民性。フィンランド人も控えめな国民性であり、日本人と非常に相性がよい、ということがある。

 

③講演2「『オウルヘルス』に向けたオウル・ヘルスケア・エコシステムと『未病』に向けた神奈川ヘルスケア・ニューフロンティアとのコンセプトに基づいた地域連携」

Business Oulu 国際事業日本担当 シニアアドバイザー 内田 貴子 氏(オウル市、フィンランド)

オウル市の概要

・オウル市は、北欧北部で最も大きい産業経済教育学術都市、首都ヘルシンキの北部600kmフィンランド中部にある人口20万人のフィンランド第5の都市である。

・ビジネスオウルは、2011年1月に発足したオウル市が100%出資している公社。市役所の経済室の役割を担う。雇用創出、経済発展のため、ビジネス雇用、失業者支援、企業内支援から海外展開、オウルの企業立地など、あらゆるビジネスの段階を支援し、産学官連携のハブの役割を担っている。

・オウル市は、日本の2つの自治体と友好都市関係にある。2005年に産業連携協定を結んだ仙台市と2014年よりライフサイエンス分野で協定を結んだ神奈川県である。

・オウル市の特徴は以下の3点

(1)世界の無線、情報通信技術(ICT)の首都 

高い技術力、世界最先端のICT技術があり、フィンランドのICT技術研究開発拠点。

(2)北欧のシリコンバレー

スタートアップエコシステムの形成都市であり、町全体がリビングラボとなっている。

本場シリコンバレーに近い起業文化であり、ハイテクスキル人材の宝庫である。

(3)優れた産学官連携 

2009年からオウル・イノベーションアライアンスを組み、地元の産学官プレイヤーが組織の枠を超えた協力体制があり、デジタリゼーション、オウルヘルス、スマートグリーン産業、スタートアップの4つのエコシステムを構築しており、スピード感のある事業化、事業展開が実現されている。

・オウル市はかつてタールで栄えたが、2000年頃からエレクトロニクスやICT分野が花開いた。今日ではデジタルヘルス分野でもフィンランドをリードしている。

・オウル市のエレクトロニクス及びICT分野の研究開発は約50年の歴史があり、オウル大学を中心に産学官で連携し、エレクトロニクス、無線通信分野で様々な世界初の研究成果を出している。

・近年の研究成果には5Gがあり、2018年からはフィンランド基幹プログラムとして6Gの研究開発がオウル大学主導で始まっており、ビジネスオウルもパートナーとして参画している。

・こうした背景から、ハイテク系ICT企業が集積しており、日本からはソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社、富士通等が進出し、コニカミノルタとトップコーンはオウル市のスタートアップを買収している。

オウル市と神奈川県との連携について

〇オウル市と神奈川県における連携の目的

(1) Eヘルスとバイオメディカル領域におけるオウルと神奈川の協力強化(事業取引と技術移転を通し、本領域における科学技術基盤を強化する。)

(2) 更なる友好関係の発展

〇目的達成に向けた活動

(1) 科学、技術、イノベーションにおける連携に向けた新たな機会を特定

(2) オウルや神奈川に所在する公的・民間機関、大学、研究センター、NGO、市民間での科学技術開発、ビジネス活動の連携

・連携活動のすべては、神奈川「未病」とオウル「オウルヘルス」コンセプトに基づいている。

・オウルヘルスはライフサイエンス分野におけるオウル市のエコシステムであり、ビジネスオウルが統括。オウルヘルスエコシステムのコンセプトは、研究者、公的機関、産業の連携を強化することであり、目的は、最先端技術と健康を融合させることである。

・これによりヘルスケアセクターにおけるイノベーションを加速させるだけでなく、企業に新たな機会を提供し、事業を促進する。

・現在は、神奈川県と連携しているがビジネス連携になかなか至らず、国際連携の課題に直面している。

〇国際連携における主な課題

(1) 言語 / 英語コミュニケーション能力

(2) ビジネス文化の違い

(3) 規制や認定の複雑さ  

※例:CE(欧州における製品に対する規制)、Medical Device Regulation(人体に触れる機器への規制)、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)での認可

(4) 日本側の英語情報の少なさ

(5) 商談に適した日本側担当者の連絡先取得とリーチの難しさ

(6) 海外活動用の恒常的な予算確保(特に大きなイベント向け)

(7) 日本の公的機関における異動習慣

〇神奈川県とオウル市における連携の展望

(1) 具体的なビジネス連携成功事例を作り出す

(2) 日本もしくはフィンランド市場に熱心な企業を見つけ出す

(3) 企業または研究連携の促進に向けて、機会や新たなアイデアを創出するための継続的な協力

 

④パネルディスカッション

神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 国際戦略担当部長 大木 健一 氏

Q国際化という観点で、スタートアップや中小企業のために対応が必要な課題はどういったことだと考えるか。

・国際化には、インバウンド及びアウトバウンド、2つの考え方がある。

・インバウンドは海外企業に興味を抱かせる国内の産業が必要。海外企業が日本へ進出すれば、税収、雇用、技術、人材流入による新たなイノベーションが起きる起爆剤となる。

・アウトバウンドにおいては、日本における中小企業で海外へのグローバル展開を見据えたビジネスモデルを持つ企業は少ない。アメリカ企業は、起業した段階でグローバル展開まで構想している。

・日本の市場は限られており、日本企業は海外へ進出しなければ大きな成長は見込めない。日本の中小企業にとって海外へ出向き、コネクションを作る際に、自己紹介から始めることは大きな負担となる。神奈川県として、その部分の緩衝材となり、日本の中小企業と相手国企業とのコミュニケーションを容易にしていく。

 

University of Oulu 教授Olli Silvén 氏

Q本連携におけるオウル大学の役割と、日本及びフィンランドの企業が国際化を目指すにあたり乗り越えるべき課題は。

・オウル大学は多くの技術やテクノロジーを持っているが、実際の触媒は大学、当局、地域アドミニストレーター、ビジネス等、地元の複合的連携であり、つまりは人である。

・単なるオフィシャルな表面的な関係ではなく、サウナへ一緒に入る等のパーソナルな関係が必要である。

・国際連携においては、オウル大学だけで完結することはなく、パートナーに何が有益なのか考えることが必要である。オウル大学はCWC-Nipponを開設したが、単なる研究協力関係のみならず、神奈川県を拠点とする企業がオウル市の企業と絆を構築する場所を作りたかった。

・グローバルな視点で考えると、神奈川県との関係はバックヤードなのかフロントヤードなのかを突き詰めないとならない。

・10年前に洗い出された課題が克服されておらず、未だに存在している。ヘルスケア技術分野で活躍している企業は中小企業で非主流の技術を使っており、あまり実績がない場合が多い。そのような企業は通常は大企業を顧客として狙っているが、大企業同士の取引が主流であり、大きな不均衡が存在している。

・中小企業が大きくなるには、グローバルレベルで市場のニッチを把握することが必要である。さらに日本の中小企業とパートナーとなり、販売力を得るために製品の補完を要求することが必要であり、自社の製品等を海外パートナーの製品等で補強することも国内市場で役立つ。

・海外進出にはコストがかかるため、パートナーを現地で得る方が有利である。

・海外進出をサポートする組織が神奈川県及びオウル市にあるが、海外進出を目指す日本企業及び日本進出を目指す欧州企業が共に互いのネットワークを利用できる。

・神奈川県もオウル市も素晴らしいサポート組織があるが、残念ながら成功事例を期待することは時期尚早であると感じる。企業同士が信頼構築するには、当事者同士がレストランで会う、サウナで会う、プライベートな人間同士の信頼関係を構築する機会が必要である。

 

CWC-Nippon CEO Mika Kouhia

Q神奈川県オウル市の連携におけるCWC-Nipponの役割について

・CWC-Nipponは、2012年にオウル大学が100%出資し、日本及びフィンランドの企業や研究機関のゲートウェイとして設立した。

・CWC-Nipponは、スタートアップやビジネスオウルなどのエコシステムのメンバーと良好な関係があり、状況を把握している。CWC-Nipponはフィンランドがバックグラウンドだが、神奈川県はホームグラウンドであり、現地の横浜国立大学、神奈川県庁、特に神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室とは密接に協力体制を築いている。

・CWC-Nipponは、学生の交換留学や、双方の大学における学位取得プログラム等を、創立当初から明確な目標の1つとしてきた。

・また、CWC-Nipponは、神奈川県とオウル市 双方の企業支援を目指し、国境を越えてビジネスを拡大する企業に対し支援を行うが、企業にビジネスチャンスやパートナーを紹介するだけではなく、異なる文化やビジネスマナーの差に苦労している企業同士の相互理解を支援している。

・CWC-Nipponにおける顧客の多くはスタートアップだが、自信より規模の大きい相手国企業とパートナー関係を結ぼうとしている。通常は、大きな知識のギャップがあり、文化の違いも加わり難しいが、CWC-Nipponの知識とネットワークを活用し、交渉の土壌を作ろうとしている。

・草の根のレベルで日本とフィンランドの企業が海外進出を支援している。

 

Business Oulu 国際事業日本担当 シニアアドバイザー 内田 貴子 氏

Qオウルヘルスネットワークに含まれている企業数及び、オウル市の国際戦略、神奈川県との好事例を世界の他国に拡大していきたいか、将来の期待見通しを教えてほしい。

・オウルには600以上のライフサイエンス系の企業があり、135程が成長中のハイテクの中小企業である。

・オウルヘルスエコシステムは会員制ではなく、地域全体をカバーしているため、600以上がオウルヘルスネットワークに含まれていると言える。オウルヘルスは国内のみでなく、海外にもネットワークを持っており、ヨーロッパコネクテッドヘルスアライアンスやデジタルヘルスヨーロッパのメンバーでもある。

・国際戦略について、ビジネスオウルは地元企業の成長や海外展開を継続的な支援をミッションとしており、以下を戦略としている。

(1) 互いの市場参入のプラットフォームとして、ターゲット市場に地域もしくは国レベルのパートナーを持つこと。

オウル市のパートナーには神奈川県や仙台市のような地方自治体、産業クラスターやコミュニティ等がある。パートナーを持つことで双方に多くの利益がもたらされると考えている。企業向けのビジネスの機会を広げたり、地域におけるビジネスサポートやツールを利用することもでき、オウル市の専門性や、オウルヘルスで蓄積した解決策を提供することもできる。パートナー間の協力関係を深めることで、更なる連携活動をもたらし、助け合い学び合うこともできる。

(2) エキスパートである外国人人材をビジネスオウルに採用すること。

現在、ビジネスオウルには、日本、ロシア、ノルウェー、ドイツ、スウェーデン、カザフスタン、オランダ、中国のスタッフが在籍している。彼らは、出身国におけるビジネス文化、マナー、言語を理解しており、ローカルなネットワークを持っているため、各国におけるビジネス展開が容易である。

・神奈川県との今後の展望について、日本のみならず他のアジア諸国に対して、オウル市はライフサイエンス分野でのヨーロッパ市場でのゲートウェイの街だと考えている。神奈川県と共に他国へ好事例を広げたいと考えている。現在、神奈川県とオウル市にてライフサイエンス分野のウェビナー開催を検討しているが、神奈川県の友好都市であるドイツの自治体を招こうと考えている。

・神奈川県の企業に、オウル市の持つ国際ネットワークを活用してもらいたいとも考えている。オウル市も神奈川県が持つネットワークを利用し、互いの持つネットワークを共有することを考えている。

・人と人を繋げ、今後も国際連携の支援を行いたいと考えている。

 

(一財)自治体国際化協会パリ事務所長 羽白 淳

Q本連携のどのような点が日欧地域連携のグッドプラクティスであるか。

・神奈川県とオウル市における地域連携が日欧のグッドプラクティスであることは、神奈川の「未病」、オウルの「オウルヘルス」というコンセプトの旗の下で、地域のステークホルダーがそれぞれ連携し、特徴のある両地域が、国を越えて連携していることにあると感じる。

・オウル市は、ICT、デジタル技術の強みをヘルスケア分野に活かすオウルヘルスのコンセプトにより、地域の大学、病院、市民、大企業、スタートアップ、行政が連携している。

・神奈川県は、健康及び病気をどちらかに割り切らず、健康と病気にまたがる変化する状況を未病とし、より精緻に捉えることにより、一人ひとりがよりよい状態になるとのコンセプトをもとに、オウル同様、地域の大学、研究機関、企業、行政が連携している。

・デジタル化は物事を0と1に分けて処理をする。0か1かに二分することはシンプルなようだが、実は更に高い壁が、デジタル世界でなく、社会の中にある。縦割りの壁、組織の壁、意識の壁等様々なものがある。行政は産業振興部局、医療担当部局、国、県、市町村、大企業、中小企業、大学、病院、壁は作ろうと思うと簡単に作ることができるし、壁の中にいると安心なので、意識の壁はより堅固になる。さらには、国の間では、言葉の壁もある。

・こうした壁を、両地域はそれぞれのコンセプトで乗り越え、連携する推進力を生んでいると感じる。これらのコンセプトを言葉だけでなく、ステークホルダーの具体的なアクションに繋げ、新しい産業が生まれる環境を作っている。

・この共通性が両者の連携に繋がり、また、共通性だけでなく両地域の持つ異なる個性がそれぞれの地域の関係者に新たな発展の可能性を加えているのだと感じる。コンセプトに基づき、壁の中に留まる意識を外に開き、行動に変えていくという地域連携が今日のグッドプラクティスを生んでいると感じる。

・デジタル化は0と1をより細かく「精緻」「精細」にすることで可能性を広げていたが、今日はこうした連携を個々の企業、事業に落とし込む活動を日々されている皆様に、壁の壊し方、乗り越え方、ドアや窓を付ける等の方法により、連携の実や多様性を生むための「精緻」「精細」な取組について、教えていただいたことに感謝する。