パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

A+ A A-

2020年、フランスで新たに250のマルシェが誕生!フランス全国マルシェ連盟を訪問取材

フランスのマルシェは、出店者と客との間で直接商品の売買が行われる小売・屋台の集合体です。マルシェの形態は、常設のものから週数回の限定開催のものまで様々であり、野菜、果物、乳製品、肉・魚などの食料品から、各種生活用品や衣料品、装飾品に至るまで多くの品物が売買されています。

フランスの観光に関する情報誌を見ていると、その地域の新鮮な食品や工芸品を購入できるマルシェを勧める記事を度々目にします。フランスのマルシェは観光資源としても重要な存在ですが、実際にマルシェを訪れてみると、食材を購入している地元住民の姿を多く見かけ、地域への重要な食糧供給の一端を担っていることがわかります。また、マルシェの閉店後には、自治体の車両が清掃を行うなどマルシェに対する自治体の関与が垣間見られ、マルシェがフランスの生活や社会に深く根付いた存在であることをうかがい知ることができます。

フランス全土では約1万のマルシェが開催されているところ、そのうち約3割が人口2,000人以下の小規模コミューン(市町村に相当し、フランス国内に約30,000存在する)において開かれていると推計されています。

2020年はフランス全土で約250のマルシェが新設され、フランスにおけるマルシェの総数は増加しています。マルシェには、観光客の誘致、地元職人への販売機会の提供、食料の安定供給確保、地産地消推進といった多くの利点があり、日本の地域が抱える多くの課題への解決策となる可能性があります。マルシェ先進国であるフランスの事例を学ぶため、マルシェ出店者が加入する全国組織であるフランス全国マルシェ連盟(以下、FNSCMF:Fédération Nationale des Syndicats des Commerçants des Marchés de France)を訪れ、会長と事務局長へ、新設マルシェの近年の特徴、マルシェ新設の流れと新設に伴う問題と対応策等について取材しましたので、その内容をご紹介します。

新設マルシェの近年の特徴

 近年、マルシェは首長が住民へ政治的なメッセージを送る手段の一つとなっています。例えば、エコロジーに重点をおいたマルシェや、地元住民のニーズにあった商品を提供し住民サービスの向上に重点を置いたマルシェが新設されています。また、フランスの伝統的なマルシェの開催時間は朝ですが、昨年新設されたマルシェには大型店舗へ対抗するため、夕方から夜間、週末に開催されるものが増えています。

自治体主催のマルシェ新設までの流れ

まず、マルシェ新設の意向を持った首長が議会へ新設を提案します。議会にて提案が承認され、法律により義務付けられた職業団体等への諮問が行われた後に、マルシェが新設されます。

職業団体はマルシェの出店者を代表する団体であり、フランス全土に複数存在します。FNSCMFはこれに該当するフランスで最も有力な職業団体です。

 職業団体は諮問を受けて、マルシェ新設への賛否及びその理由を行政に伝えます。新設への賛否を判断するにあたっては、出店者にとって採算がとれるのかという観点から、当該マルシェの永続的な開催の可否を検討します。もっとも諮問であるため、職業団体の意見には法的拘束力はありません。

マルシェ新設に伴う問題と対応策

かつては、マルシェ新設にあたっては開催予定地の周辺店舗からの反対が大きな障害となっていました。これは、マルシェ新設による競合店舗の増加により、自身の収入が減少すると周辺店舗が考えていたためです。しかし、近年では、真の競合相手は郊外の大型店舗及びインターネット販売であり、これらに対抗するため周辺店舗とマルシェが協力する必要があるとの新しい考え方が広がっています。

 FNSCMFは、マルシェ出店者と周辺店舗の良好な関係構築のため、両者が参加する蚤の市やクリスマスイベント等に加えて、周辺店舗を代表する全国組織と共同で両者に向けたセミナーを開催するなど、マルシェの円滑な運営をサポートしています。

成功するマルシェの条件

 マルシェの成功には自治体の積極的な関わりが必要で、マルシェ出店者の売上げ増を図るためのプロモーション、良好な開催場所の選定、良好な衛生環境の保持が特に重要です。 

その中でも開催場所の選定は最も重要であり、マルシェが成功するか否かは開催場所に大きく左右されます。マルシェは、街の中心部で、様々な場所から目につきやすく、アクセスが容易であり、近くに大きな駐車場がある場所で開催されることが理想的です。理想的な開催場所が選定できればマルシェにとって最大の利点となる反面、開催場所に問題があればマルシェにとって致命的な欠点にもなり得ます。

 また、消費者の求める食料品や日用品のほとんどをマルシェにて購入できるよう、商品の多様性確保すること、マルシェ出店者間の競争を促すことも重要です。例えば、八百屋、魚屋、肉屋が各1店舗のマルシェは、内部での競争がなく価格や品質などの面で魅力的な商品を消費者に提供できないため、すぐに廃れてしまいます。

マルシェの運営主体

フランスでは多くの場合、自治体がマルシェを主催していますが、自治体の行政規模によりマルシェの運営者は異なります。例えばパリのような大都市においては、自治体から出店場所分配の権利を買い取った民間業者が出店者を募集しており、同様に、パリ市が属するイル・ド・フランス州内の自治体のうち約8割が民間企業に出店者募集業務を委託しています。

一方、行政規模の小さい自治体では、自治体が直接出店者を募集しており、イル・ド・フランス州外の自治体では約2割が民間企業に出店者募集業務を委託しています。民間企業に出店者募集業務を委託せず直接出店者を募集している自治体では、民間企業が関わらないため利害関係者が少なく、トラブルが少なく円滑なマルシェ運営が可能というメリットがあります。

 マルシェには、観光客誘致、地元職人への販売機会の提供、食料の安定供給確保、地産地消推進など多くの利点があり、日本の地域が持つ多くの課題への解決策となる可能性があります。今後は、マルシェを新設したフランス自治体への聴き取り等を通して、有益な情報を日本にもお届けできるよう調査を進めてまいります。

 

marche1

地元の職人が工芸品を販売するフランス南部の都市イエールの夜間マルシェ

(夏季のフランスは、日没時刻が22時頃であり、夜間でも明るい。)

 

marche2

フランス南部の都市イエールの夜間マルシェにてフランス南部で有名な石鹸を販売する店舗